Bookshelf × MCP

「この本、読んだ?」に答えてもらう 自分の読書記録を、
AI にわたしてみた

本屋さんで、ふと手が止まる。
「あれ、この本もう持ってたかな?」——そんなときの話。
10年ぶんの読書メモを、ぜんぶ AI にわたしてみたんだ。

2026年7月 読了 約10分 AI をちょっと便利に使いたい人へ

AI を、
かしこくしたんじゃない。
"自分の本棚"に、つないだだけ。

AI ってなんでも知ってるみたいだけど、じつはね、きみが何を読んだかは知らないんだ。そこだけをちょこっと埋める小さな道具を、ひとつ手わたしてみる。すると、なんでも屋さんの AI が、きゅうに「自分のこと」を分かってくれるようになる——そんな手ざわりを、読書記録をつかって話していくね。

この記事のといかけ

なんでも知ってる AI に「自分だけの道具」を
ひとつ持たせると、どうしてきゅうに頼れるの?
それに、パソコンの中で動いてた道具を、
どうしてわざわざ世界じゅうに公開しちゃったの?

さきに答えを言っちゃうね。AI をかしこくするより、"自分のデータ"につなぐほうが、ずっと「おおっ」てなるんだ。そのためのつなぎ方のきまりが MCP っていうやつで、思ってたよりずっと小さく作れる。作ったあとに「スマホからも使いたいなあ」って欲が出て、そこでちょっとだけ話がややこしくなる。その"ちょっと"の中身が、この記事の後半だよ。

かんたんに言うとね

もの知りな案内係さんがいても、きみのおうちの本棚の中までは知らないよね。だから「この本もう持ってる?」には答えられない。そこで案内係さんに、きみの本棚だけをのぞける小さな窓を、ひとつ付けてあげる。すると急に「それ、7年まえに買ってるよ」って言えるようになるんだ。MCP は、その"窓の付けかた"を決めたきまりだよ。

Chapter 01

本屋さんで、
また固まった

かんたんに言うとね——「これ読んだっけ?」は、記録があっても、その場でパッと引けなきゃ意味ないんだ。読書メモは10年ぶんもあるのに、いざってときに取り出せなかった、っていう話。

はじまりは、いつもの本屋さんだった。おもしろそうな一冊を手に取って、そこでピタッと止まっちゃう。「これ、前に買ってなかったかな?」。うーん、思い出せない。スマホで読書アプリを開いて、指でスクロールして、たいてい途中であきらめる。で、買って帰ったら、家の棚に同じ背表紙がいる——そんな失敗を、何回かやってるんだ。

読書の記録じたいは、ちゃんとある。読書メーターっていうサービスに、読んだ本を、ずっと記録してきた。数えてみたら、読んだ本は1800冊あまり(のべ2000件を超える)。そのうち、感想まで書いたのが877冊10年ぶんの読書ログを分析した記事を書いたこともある。とにかく、この読書メモが、まるごと手元にあるんだ。こまるのは、いちばん必要なその瞬間に、それを引けないことなんだ。

やりたいことは、じつはすごく素朴でね。「三体って読んだ?」「冨樫義博の本、何冊あるっけ?」「今年は何冊読んだ?」——これに、その場でパッと答えが返ってくればいい。アプリを開いてスクロールするんじゃなくて、ふだん使ってる AI に、そのまま聞きたいんだ。

そしたらね、ちょうど手元に、その隙間を埋めてくれる仕組みがあった。MCP っていうやつだよ。

Chapter 02

MCP って、
"道具のさしこみ口"なんだ

かんたんに言うとね——MCP は「AI に道具をつなぐための、共通のさしこみ口」。USB-C みたいに形がひとつに決まってるから、道具を作る人は「どの AI 用かな」って悩まなくてよくなったんだ。

MCP(Model Context Protocol)っていうのはね、AI に「外の道具」を持たせるための、みんな共通のきまりなんだ。2024年の終わりに公開されて、いま2026年ではもうけっこう広く使われてる。むずかしく考えなくていいよ。スマホの USB-C のさしこみ口を思い出してみて。

むかしは、機械ごとにケーブルの形がバラバラだったよね。充電器もイヤホンも、専用のさしこみ口がないと使えなかった。USB-C は、それをひとつの形にそろえた。MCP がやったのは、その「AI と道具」バージョンなんだ。お天気を調べる道具、書類をさがす道具、そして——自分の読書記録を引く道具。さしこみ口の形が同じなら、道具を作る人は「どの AI 用に作ろう」って迷わなくていい

この「作る人がラクになる」っていうのが、けっこう効くんだ。AI そのものを自分で動かすタイプの仕組み——前に書いた朝刊エージェントみたいに、AI を呼び出してパイプラインを組む話——とは、じつは向きが逆でね。あっちは「AI を自分で動かす」。MCP は「できあいの AI に、道具のほうをさしこむ」。自分で AI を動かさなくていいぶん、ずっと手軽なんだ。

2つの向き

自分で AI を動かす:呼び出してパイプラインを組む(がんばって作る)
道具のほうをさしこむ:できあいの AI に MCP で足す(かるい)

読書記録を引くだけなら、下のやりかたで十分なんだ。自分で AI を動かす必要はない。ふだん使ってる Claude に、本棚をのぞく窓を、ひとつ足してあげればいい。やることは、その窓——小さなサーバーってやつ——を、ひとつ書くことだけになる。

Chapter 03

道具は3つだけ。
よくばらない

かんたんに言うとね——道具は「さがす・著者でならべる・数える」の3つだけにしぼった。もっと増やせたんだけど、まずは動くものを出すのを、いちばん大事にしたんだ。

読書記録っていってもね、中身はただの、タイトル・著者・日づけ・短い感想がならんだデータの束なんだ。これを AI から引けるように、道具を3つだけ用意した。

· さがす

タイトルや著者のことばで検索する。「この本読んだ?」に答えるための道具だよ

· 著者でならべる

「冨樫義博の本ぜんぶ」みたいに、書いた人でまとめて出す

· 数える

ぜんぶで何冊か・著者ランキング・年ごとの冊数を数える

これで足りるんだ。感想を全部さがしたい、似た本をおすすめしてほしい、読んだペースをグラフにしたい——欲を出せば、道具はいくらでも増やせる。でもね、増やさなかった。まず動くものを手元に置いて、じっさいに使ってから考えればいい。使う前に「あったら便利かも」で足した機能って、たいてい使わないんだよ。

おなじ考えを、土台の選びかたでもした。MCP の部品には新しいバージョン(v2)の準備が進んでたんだけど、まだ安定してなかった。だから、枯れてて動く実績のある古いバージョン(v1)をえらんで、新しいのへの引っ越しは「べつの日の仕事」にした。動くことがいちばん大事なときに、足元の土台をわざわざ賭けにする理由はないもんね。

まず出す、っていう考え

「あとで広げやすいように」って土台を作りこむほど、最初の一歩は重くなる。3つにしぼって、枯れた土台に乗せる——この2つだけで、その日のうちに動くところまで行けたんだ。広げるのは、必要になってからでいい。

ここまでは、ほとんど迷わずに進んだ。話がややこしくなるのは、この道具を「どこに置くか」を考えはじめてからなんだ。

Chapter 04 — 図で見る

どこに置く?

かんたんに言うとね——おなじ道具でも「手元のパソコンに置く」か「世界に置く」かで、使える場所が変わるんだ。ブラウザの Claude から使いたいなら、手元に置いたままじゃ届かない。

道具は書けた。つぎは「どこで動かすか」だ。えらべる道は2つあってね。手元のパソコンの中で動かすか、インターネットに置いて、世界から呼べるようにするか。下の図が、そのちがいのぜんぶだよ。

手元のパソコンに置く Claude Desktop / Code からは使える。でも、ブラウザからは届かない。 自分のパソコンの中 Claude Desktop / Code 読書記録の道具 (パソコンで起動) 1808冊 読んだ本 claude.ai (ブラウザ) × 手元の道具には届かない 世界に置く(AWS Lambda で公開) ブラウザ・スマホ・Desktop、どこからでも使える。かわりに鍵をかける。 claude.ai スマホ / Desktop Anthropic の クラウド 160.79.104.0/21 世界に置いた道具 鍵① 決まった発信元だけ通す 鍵② 当てられない秘密の入口 1808冊 読んだ本 月ぜんぶで ほぼ 0円

上のほうは「手元のパソコンの中」でぜんぶ終わる。手軽なんだけど、ブラウザ版の Claude(claude.ai)からは届かない——パソコンの中で動くものには、ブラウザは繋がれないんだ。下のほうは、道具をインターネットに置いて、どこからでも呼べるようにする。かわりに、だれでも叩ける入口になっちゃうから、鍵を2つかける。「どこからでも使える」と「だれでも叩ける」は、じつはおなじことの表とうらなんだよ。

さいしょは、上のほうだけで満足してたんだ。手元の Claude から本棚を引ければ、やりたかったことはできてるからね。でも「スマホからも使いたいなあ」って思ったしゅんかん、話が下のほうへ動いた。前提が変わっちゃったんだ。つぎの章は、その下のほう——世界に開けることの、代償の話だよ。

Chapter 05

世界に開けると、
だれでも叩ける

かんたんに言うとね——道具を世界に置くと、だれでも叩ける入口になる。パスワードの仕組みをがんばって作るかわりに、「発信元をしぼる」「入口を秘密にする」の2つで守った。データはもう公開してるから、ねらいは秘密を守ることじゃなくて、無駄に叩かれないことなんだ。

ブラウザの Claude から自分の道具を使うにはね、その道具をインターネット上の住所(URL)として公開しなきゃいけない。仕組みのうえで、AI 本体は自分のパソコンからじゃなくて、Anthropic のクラウドのほうからその住所を叩きに来るんだ。だから住所は、世界に開いてないといけない。

世界に開いた入口には、あたりまえだけど心配ごとがある。ふつうはここで「ログイン(パスワード)」をがんばって作るところなんだけど、その仕組みって重いんだよね。自分の読書記録に、そこまで積むのは、ちょっと大げさだ。そこでパスワードを作らないかわりに、かるい鍵を2つだけかけた。

鍵①

発信元をしぼる

この道具をちゃんと叩いてくるのは、Anthropic のクラウドだけなんだ。だからその発信元の住所帯だけを通して、あとは門前ばらいにする。自分のパソコンからブラウザで直接ひらいても、はじかれる——それが正常、っていう状態にした。

鍵②

入口を秘密にする

住所のうしろに、当てずっぽうじゃ辿りつけない、長いあいことばを付ける。あいことばを知らなきゃ、正しい住所にも入れない。しかもこのあいことばは、公開してるプログラムには書かないで、動かすときだけ外から手わたす。公開したものをどこ探しても、あいことばは出てこないんだ。

ここでね、正直に前提をひとつ置いておきたい。読書記録のデータそのものは、もう公開してるんだ。道具のプログラムといっしょに、だれでも見られる場所に置いた。だから2つの鍵のねらいは、「秘密を守る」ことじゃないんだよ。

守ってるのは秘密じゃない

さいあく、だれかに道具を叩かれても、返ってくるのは「もう公開ずみの1808冊」だけ。
だから鍵は、秘密のためじゃなくて「無駄に叩かれない」ためにかけてるんだ。

この見きわめは、大事だと思ってる。守るものの正体を「秘密」だと勘ちがいすると、パスワードだの暗号だのを、どんどん積みたくなっちゃう。でも守ってるのは秘密じゃなくて、ただの落ちつき(無駄に叩かれてお金がかからない、っていうくらいの安心)なんだ。そう見きれれば、鍵は2つで足りる。パスワードなしで入口を開けることは、AI 側の公式もちゃんと想定の内だよ——公開する入口の、気をつけるポイントをふまえたうえで、読むだけの道具にかぎって、の話だけどね。

Chapter 06

あれれ、
うまくいかないぞ?

かんたんに言うとね——世界に置く土台は、よけいな部品を足さなければ、月ぜんぶでほぼ0円におさまる。ただ、とちゅうで、部品どうしの相性で1回つまずいた。安く上げる道は、たいていちょっと回り道になるんだ。

世界に置く土台には、使ったしゅんかんだけ立ちあがるタイプのサーバー(AWS Lambda っていうやつ)をえらんだ。待ってるあいだはお金がかからない。個人が月に数十回くらい叩くだけなら、ただの範囲におさまって、じっさい0円だ。この「持つより、呼ぶほうが安い」っていう考えは、このサイトそのものの作りや、朝刊エージェントのお金を10分の1にした話とおなじ筋にあるんだ。

0円を守るために、わざと足さなかった部品が2つある。手前に置く受付係(入口をべつ立てにする部品)と、防火へき(あやしいアクセスをはじく専用サービス)。どっちも「あると見ばえがいい」んだけど、月ぎめのお金が乗っちゃう。さっきの2つの鍵は、この2つを足さずに済ませるための工夫でもあったんだ。守りかたを軽くすれば、作りも安くなる。

つまずいた1つ

とちゅうでね、正しい入口はちゃんと動くのに、まちがった入口を叩くと、へんなエラーが出る症状にぶつかった。あれれ? って。原因は、土台に使った部品の新しいバージョンと、それを乗せる接着剤の相性だった。新しくすれば良い、ってわけじゃないんだね。枯れて相性のとれたバージョンどうしにそろえて、へんな入口には自分で「ないよ」って返すひと手間を足したら、ちゃんとおさまった。

この手のつまずきって、記事だとよく消されちゃうんだ。でもね、じっさいの作業って、半分はこういう相性合わせでできてる。新しい部品ほど良い、とはかぎらない。「枯れた組み合わせ」をえらぶのは、土台で古いバージョンをえらんだのとおなじ考えだ。地味なんだけど、これが効くんだよ。

あとね、公式が用意してる「Lambda 用の変換キット」も見てみたんだけど、これは使わなかった。それを使うと、ふつうの AI からは繋げない形になっちゃうんだ(べつのやり方の認証が要るからね)。公式だから最適、ってわけでもない。やりたいこと(パスワードなしで、ふつうの AI から繋ぐ)に、すなおな作りをえらぶほうが、けっきょくまっすぐだった。

Chapter 07

持って帰る3つ

かんたんに言うとね——「自分のデータにつなぐ」「よくばらない」「前提が変わったらやり直す」。この3つが、今回いちばん効いた芯だったよ。

本屋さんの小さなこまりごとから始めて、公開までやってみた。持って帰れる芯を、3つだけね。

1

かしこくするより、つなぐ

なんでも屋さんの AI をどう賢く使うか、より、"自分のデータ"につなぐほうが、ずっと「おおっ」てなる。もの知りな案内係さんに、自分の本棚をのぞく窓をひとつ足すだけで、「自分のこと」を分かってくれる。つなぐ先は、読書記録じゃなくてもいい。家計でも、レシピでも、日記でも、おなじ形が効くよ。

2

よくばらないほど、出せる

道具は3つ、土台は枯れたバージョン、守りはかるい鍵2つ。「あとで広げやすいように」をがまんするほど、最初の一歩は軽くなる。使う前に「あったら便利かも」で足した機能は、たいてい使わない。まず出して、使ってから足せばいい。

3

前提が変わったら、やり直す

「手元で使えれば十分」で始めた道具は、「スマホからも」で前提がひっくり返って、公開する作りにやり直しになった。さいしょの決めごとが古くなったら、すなおにやり直す。よくばってなければ、やり直しも軽いんだ。1と2は、3のための備えでもあるんだよ。

いちばんの収穫はね、道具そのものより「自分のデータに AI をつなぐ」入口の低さを、体で分かったことだった。むずかしいのは AI のほうじゃなくて、たいてい自分のデータを、どう小さく切り出してわたすかのほうにある。読書記録は、その練習にちょうどよかったんだ。

本屋さんで「これ読んだっけ?」って固まったら、いまはポケットの中の Claude に聞けばいい。AI エージェントの大きな話の手前に、こういう半日で作れる小さなつなぎ目が、いっぱい転がってるんだよ。

Coda

AI を、かしこく
したんじゃない。
"自分の本棚"に、
つないだだけ。

むずかしいのは、たいてい AI のほうじゃない。
自分のデータを、どう小さく切り出すかのほうにあるんだ。

読書記録は、たまたま手元にあった材料にすぎない。家計でもレシピでも日記でも、「自分のデータに窓をひとつ付ける」っていう形は変わらない。半日あれば、本屋さんで固まる時間は消せる。道具は小さくていい。効くのは、つながってること、それじたいなんだ。

Fact-check

大事なところは、ちゃんと元の情報で確かめたよ:MCP(Model Context Protocol)は Anthropic が2024年11月に公開したオープンなきまり/遠くから繋ぐときの通信方式 Streamable HTTP は2025年3月のMCP仕様の見直しで採用/AI 側の発信元の住所帯・自作コネクタの登録じょうけん(無料プランでも1個まで・パスワードは任意)は Anthropic の公式ドキュメントで確認/使ったしゅんかんだけお金がかかるサーバーの無料わく(月100万回+40万GB秒)は AWS 公式の料金ページのとおり。読書の数は、読んだ本(ユニーク)1810冊・のべ2041件・感想を書いたのが877冊——公開MCPは、地域が分かる2件だけ外して1808冊(感想875)を配信している。「賢くするより繋ぐほうが効く」「よくばらないほど出せる」みたいな感想は、調べものじゃなくて、今回じっさいに作ってみて自分が思ったこと。ちがうよって思ったら、教えてくれるとうれしい。